高騰する銅価格、相次ぐ盗難事件の裏側 — 富山県で増加する銅製品の被害

富山県高岡市で銅合金の原材料や銅像の盗難被害が相次いでいます。背景には銅価格の急騰があり、その実態を探りました。

伝統の町で相次ぐ銅製品の盗難

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先月、高岡市の鋳物製造会社で銅合金のインゴット(鋳造用の金属の塊)が何者かに盗まれる被害が発生しました。今年4月には伝統的な鋳物師の町として知られる金屋町でも、店舗前に置かれていた銅像4体が盗まれるという事件が起きています。

被害に遭った会社は、転売が目的の窃盗と推測していて、背景には銅価格の大幅な上昇があるとみられています。

コロナ禍以降、3倍に高騰した銅の価格

県内の金属買取業者では、真ちゅうや銅の持ち込みがコロナ禍以降増加しているといいます。中嶋商事の中嶋靖男社長によれば、コロナ禍前は1キロあたり400円から500円だった銅の価格が、現在は約1300円にまで値上がりしているとのこと。実に3倍近い価格上昇です。

「(銅の値段が)上がっている原因は電気自動車の生産。いろんな業界で銅の需要が年々増えている。銅の鉱山は限られているからリサイクルしないと間に合わない」と中嶋社長は説明します。

多様化する銅製品の持ち込み

中嶋商事では、会社や個人から依頼された非鉄金属くずなどの処分品を買い取り、リサイクルに回しています。ここ2〜3年で特に買い取りが増えているのが銅製品だといいます。

「エアコンの配管から出た銅管ですね。エアコンと繋がるここは真ちゅうです。これは蛇口。これは仏壇から外したもの。これは基盤にある銅ですね。全部銅線で出来ている」と中嶋社長は持ち込まれる多様な銅製品を紹介します。

盗難防止の取り組みと課題

県内で相次ぐ銅製品の盗難事件を受けて、買取業者側も対策を講じています。中嶋商事では、持ち込まれる物について身分証明書の提示を求め、盗難品の買取を防ぐよう努めているとのことです。

「1万円を超えるバイクや車の部品などを売りに来る人は身分証のコピーが必要」と中嶋社長は説明します。

しかし、銅製品の転売防止には課題も残ります。持ち込まれる銅製品の中には細かく砕かれ、原形をとどめていないものもあるため、買い取りの際の身分証明書提示を徹底するしか現状では対策がないといいます。

高値が続く銅価格と相次ぐ盗難事件。伝統工芸の街として知られる高岡市で今後どのような対策が取られるのか、注目されます。

富山テレビ
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