遠藤航:
優勝できたことに対してはすごく嬉しいですけど、出場機会というところでいうと悔しさの残るシーズンではありました。

こう回顧したのは、4月に史上最多タイ・20回目のプレミアリーグ優勝を決めたリヴァプールに所属し、サッカー日本代表ではキャプテンも務める遠藤航(32)。
昨シーズンはリヴァプールの主力として活躍したが、一転、今シーズンは控えに回ることに。チームが優勝を決めた試合までスタメン出場の機会は訪れなかった。それでも、シーズンのラストにはリヴァプールサポーターの心をつかみ、影のMVPとまで称された遠藤。
彼はなぜ世界的名門クラブで愛されているのか?
その理由を探して、「すぽると!」MC・佐久間みなみアナウンサーはイングランドへ。遠藤航本人に加え、現地記者やファン、さらには世界的スターへ敢行した徹底取材の模様をお届けする。
リヴァプールサポーターからみた「遠藤航」
イングランド北西部に位置する人口およそ50万人の都市・リヴァプール。ビートルズの出身地としても有名な街だ。
佐久間アナ:
見てください! リヴァプールのホーム「アンフィールド」です!


佐久間アナが訪れたのは「アンフィールド」。1892年のクラブ創設以来、リヴァプールのホームスタジアムとなっている“聖地”だ。

この日はプレミア優勝決定後、最初のホームゲームであることに加え、優勝を争ったアーセナルとのビッグマッチのため、スタジアムの周りはお祭りムード。

ここで目の肥えたサポーターに、遠藤について聞いた。

佐久間アナ:
遠藤選手の印象を教えてください。
男性サポーターA:
努力を惜しまず仕事を全うするプロフェッショナルです。プレー時間が短いのは残念だけど、来期も彼を確保しておきたいですね。

また、別のサポーターは…
男性サポーターB:
ファンタスティックだね。スポーツマンで真のジェントルマンです。
佐久間アナ:
一番好きなところはどこですか。
男性サポーターB:
働きぶりです。常に100%で文句も言いません。

少年サポーター:
Wataru Endo! He is Japanese Endo! He wears number3 Endo! And he’s gonna win the league!
(訳: 遠藤航! 彼は日本の遠藤だ! 彼の背番号は3だ! 彼はプレミアを制する!)
小さな少年サポーターはチャント(応援歌)まで披露してくれ、遠藤がサポーターのハートを鷲づかみにしていることが伝わってきた。
ここまでサポーターを引き付ける所以(ゆえん)は何か。
遠藤への単独インタビューからその答えが見えてきた。
遠藤航に単独取材! 光と陰が同居した1年に迫る

佐久間アナ:
優勝のあの瞬間にピッチに立っているのは、本当にかけがえのない瞬間だったと思いますが、率直にどんな思いでしたか?
遠藤:
そうですね。本当にうれしかったですね。ピッチに立てたこともそうですし、みんなの喜ぶ顔が見られたり。それはファンの方たちも含めて、喜ぶ顔が見られて本当にうれしかったなと思います。
佐久間アナ:
優勝セレモニーの時、一人で立ち尽くしている姿もあったと思いますが、あれはどんなことを考えていたんですか?
遠藤:
たぶん結構(セレモニーの)終盤ですよね? 腕を組んで立っていたのは。試合が終わってからずっとお祝いして、みんなチャント(応援歌)を歌ってくれたり、ワイワイしていたりする中で、もうそろそろロッカー戻っていいんじゃないかなと思っていました。

佐久間アナ:
まさかの!「もういいんじゃないか?」っていう感想!
遠藤:
「そろそろ帰りますか」みたいな感じでした、はい。(笑)
こう言って、いたずらっぽく笑った遠藤。それは、冷静と情熱の間で、数奇なシーズンを経てたどり着いた境地だったのかもしれない。
不遇と歓喜が交錯した2024-2025
2年前、遠藤航は30歳にして世界的なビッグクラブ・リヴァプールに移籍。クロップ監督のもと、シーズン中盤からスタメンに定着すると、ボランチで圧倒的な存在感を放ち、チームの主軸として大車輪の活躍を見せた。
しかし、今シーズン、指揮官がスロット監督に代わると、状況は一変。控えに回り、試合に出場しても終了間際に数分間という不遇の扱いが続いた。そんな中、遠藤はどういう心境にあったのだろうか?
佐久間アナ:
どんなことを考えながら、どんな行動をしていきましたか?
遠藤:
やっぱ最初の方はね、ちょっと…。途中から(試合に)入る前のウォーミングアップをなんとなくやっていたことが最初の数試合はあったんですけど、やっぱりそれじゃダメだなと思った瞬間がありました。
その“瞬間”が訪れたのは、今シーズンのチーム5試合目となったチャンピオンズリーグ・ACミラン戦。この試合で後半48分から出場となった遠藤は、ウォーミングアップ中に、途中出場への向き合い方を根底から見直す。

遠藤:
(スタメンで)試合に出ている時の自分の感覚と、残り5分とか10分で出る時の試合の感覚って全く違うんですけど、「違うからしょうがない」と終わらせるんじゃなくて、その中でも試合をずっとやっている感覚で、自分が残り10分でプレーするためにどうしたらいいかを考えたのがそのACミラン戦。それがきっかけでした。1分でも2分でも、チャンスが来たらとにかくインパクトを残すというか。わずかな出場時間でもチームの勝利に貢献するために、戦況を理解し、やるべき仕事を明確にする。
この思考に行き着いた遠藤は、徐々に途中出場の回数が増加し、いつしかチームがリードしている状況で出場して試合を締める役割を任されるようになったのだ。
現地専門誌記者、そして世界的スターから見た「遠藤航」
シーズンが進むにつれ、控えから、チームの勝利に欠かせないピースへと変わっていった遠藤。彼について現地メディア「This is Anfield」のラドソン記者はこう話す。

ラドソン記者:
試合終盤に登場して勝利に導く。サポーターは「ザ・ロック」というニックネームをつけています。遠藤がサイドラインに立つと、勝ちを確信します。素晴らしいことです。
佐久間アナ:
野球でいうところのクローザーのように?
ラドソン記者:
間違いなくクローザーです。
“勝ちを確信”するのもそのはず。今シーズン、遠藤が途中出場した試合はなんと17戦無敗。完全無欠のクローザーは、リヴァプールを5年ぶりの歓喜へと導いた。
さらに佐久間アナは、リヴァプールのキャプテンでオランダ代表のスター選手、ファン・ダイク(33)にも遠藤について聞くことに成功した。
佐久間アナ:
遠藤選手はチームに何をもたらしていますか?
ファン・ダイク:
経験、プロ意識、そしてクオリティーだ。彼は日本代表のキャプテンだし、チームにいることを嬉しく思うよ。
佐久間アナ:
彼から学べることは何ですか?
ファン・ダイク:
僕たちは互いに学び合っている。じゃないとサッカーが退屈なものになるからね。
全てはチームが勝利をつかむため

遠藤:
もちろん、毎試合毎試合出たいと思っていましたけど、本当に大事なのはタイトルを取ることだと思ってやっていました。リヴァプールはそれが求められると思うし、そこが自分のモチベーションであるからこそ、あまりスタメンで使われなくてもフラストレーションがたまらなかったです。
自分の中で軸があったのは良かったです。優勝するための一つのピースとして自分の存在意義を示せたシーズンではありますね。
このリヴァプールプライドと不屈のメンタリティーこそが、遠藤航が世界最高峰の舞台で愛される理由なのだろう。
サムライブルーのキャプテンとして 遥かなる夢への現在地は
プレミアリーグ優勝という宝物のような経験を引き下げ、いよいよ来年迎えるのは、ワールドカップイヤー。
「僕らの今の目標はワールドカップで優勝することです」
3月に世界最速でワールドカップ出場を決めた試合の後に、ピッチの上で遠藤が発した言葉だ。
佐久間アナ:
来年はワールドカップがあります。より一層大事なシーズンになってくると思いますが、いかがですか?
遠藤:
自分たちも期待しているし、皆さんにも期待してもらっていると思うので、それに向けて、とにかくいい準備をしていきたいなと思います。

リヴァプールの遠藤だけでなく、ソシエダの久保建英やブライトンの三笘薫など、現在、ヨーロッパ各国を席巻するサムライブルーの戦士たち。そんな仲間たちの進化に、キャプテンも大きな手応えを感じている。
遠藤:
海外に出て活躍している選手たちも増えましたし、ただ移籍するだけじゃなくて、しっかり結果を残す選手たちがどんどん増えているのはすごく頼もしいなと思います。やっぱり個の成長がチームの成長につながるので、それはみんな体現できているんじゃないかと思っています。
夢への歩みは日進月歩で加速している。
『すぽると!』
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